2024年12月29日(日) きょうの潮流
- 羅夢 諸星
- 2024年12月30日
- 読了時間: 5分
2024年12月29日(日)
きょうの潮流
「現在の日米安全保障条約においては、いまだに日本がアメリカに対して従属的地位に置かれている」。この質問に「そう思う」と答えた人が73・1%いたそうです。元自衛隊員の意識調査結果です(『元自衛隊員は自衛隊をどうみているか』青弓社)。軍事の現場にいる実感なのかもしれません
紹介
自衛隊退職者は自衛隊に対してどんな意識をもっているのか。平和・安全保障問題に関する今後の議論の基礎になる客観的・学術的なデータを得ることを目的に、自衛隊退職者を対象に実施した「安全保障・防衛問題に関する意識調査」の結果を報告する。
解説
自衛隊退職者は自衛隊にどういう意識をもっているのか。平和・安全保障問題に関する今後の議論の基礎になる客観的・学術的なデータを得ることを目的に、自衛隊退職者を対象に実施した「安全保障・防衛問題に関する意識調査」の結果を図表にまとめて報告する。現代日本の平和・安全保障問題をめぐる状況は、大きな変革の時期を迎えている。従来からの懸念だった東アジア地域での脅威の増大や米中対立の先鋭化に加え、2022年のロシアによるウクライナ侵攻は全世界に衝撃を与えた。これを受け、日本政府は防衛力強化に向けて安保関連3文書を改定、防衛費の大幅増額や反撃能力保有の是非が政治的議題として浮上している。ところが、現在の市民社会のなかで「戦争」や「軍事」の十分な理解に基づく議論の機運が醸成されているとは言いがたい。研究会が調査した自衛隊退職者は、かつては軍事を専門とする職に就き、いまは一般市民として生活している。平和・安全保障問題については、元自衛隊員としての経験や実感に根差した独自の認識や見解をもっているはずだ。前著『日本社会は自衛隊をどうみているか』で取り上げた一般市民の意識との差異を明らかにし、両者を比較・検討・総合することで、現代日本の平和・安全保障問題に関するより立体的・客観的な知見が得られるにちがいない。内憂外患の日本にとって、安全保障とは何か、そして平和とは何か。この国の行く末を探るための導きの糸を世に問う。
元自衛隊員は自衛隊をどうみているか 自衛隊退職者に対する意識調査・報告書
目次
はじめに解説 自衛隊の組織と階級(予備調査・問1)1 安保関連3文書についての考え 安保関連3文書に関する意見(問1) 「反撃能力」の保有(問2) 防衛費GDP2%に関する意見(問4) 防衛費GDP2%の財源(問6) 安全保障上の脅威を感じる国(問7) 今後10年以内の有事の可能性(問8) 日本が武力紛争に巻き込まれる状況(問9)2 日本の防衛体制・安全保障環境 ロシアによるウクライナ侵略は、日本の安全保障についての考え方に影響を与えたか(問10) 憲法9条に関わる憲法改正についての考え(問12) 軍事や防衛政策について国民各層は理解していると思うか(問13) 日本有事を想定した場合、自衛隊が期待通りに戦えると考えるか(問14) 日本有事を想定した場合、自衛隊にどのような危惧を覚えるか(問15) 有事における人員や装備品の補充等の兵站の面で、自衛隊の継戦能力は十分あるか(問16) 日本の防衛体制等に関する現状認識や意見(問17)3 自衛隊の組織のありかた 自衛隊の人材確保の方法として適切だと思うもの(問18) 退職自衛官の再就職援護の効果(問19) 自衛隊で中途退職者を生む原因(問21) 自衛隊のこれまでのハラスメント対策についての考え(問22) 在職中、自身の人事についてどう思ったか(問24) 自衛隊の幹部養成制度について改善すべき点があるか(問25) 女性職員の活躍推進施策への評価(問27) 女性職員の活躍推進施策への評価の理由(問28) 自衛隊の組織文化・組織風土についての評価(問29)4 自衛隊と市民社会 防衛省・自衛隊の広報への評価(問30) 自衛隊を題材とした作品で高く評価できるもの(問32) 地方協力本部の役割への評価(問33) 地方協力本部の役割への評価の理由(問34) 現職自衛隊員と自衛隊退職者との接触に関するルールを厳格化すべきか(問35) 自衛隊や日本の防衛政策についての個人的意見(問36)5 自衛隊在職時と退職後のキャリア 陸・海・空の各自衛隊のどれに所属していたか(問37) 自衛官への任官・退職年(問38) 自衛隊にどのようなコースで入隊したか(問39) 自衛隊を最後に退職した時の階級名(問40) 現在、どのような仕事に就いているか(問41) 再就職にあたって、防衛省・自衛隊・部外関係団体からの援助を受けたか(問42) 現在、予備自衛官または即応予備自衛官か(問43) 自衛隊退職者団体の会員になっているか(問44)付録 回答者の諸属性 性別 年齢層(6階層) 地域 未既婚 子供の有無 世帯年収 個人年収 職業
著者プロフィル
ミリタリー・カルチャー研究会(ミリタリー カルチャー ケンキュウカイ)
伊藤公雄(いとう きみお)
京都大学・大阪大学名誉教授
植野真澄(うえの ますみ)
政治経済研究所研究員
太田 出(おおた いずる)
京都大学教授
河野 仁(かわの ひとし)
防衛大学校教授
島田真杉(しまだ ますぎ)
京都大学名誉教授
高橋三郎(たかはし さぶろう)
京都大学名誉教授
高橋由典(たかはし よしのり)
京都大学名誉教授
津田壮章(つだ たけあき)
京都大学教務補佐員
新田光子(にった みつこ)
龍谷大学名誉教授
野上 元(のがみ げん)
早稲田大学教授
福間良明(ふくま よしあき)
立命館大学教授
吉田 純(よしだ じゅん)(代表)
京都大学教授
上記内容は本書刊行時のものです。
▼敵基地攻撃能力の保有も米国からの要求でした。トランプ氏は第1期大統領時の2017年2月、安倍晋三首相を米フロリダ州の邸宅に招き、「日本も攻撃能力を持つべきだ」と迫りました。元朝日新聞主筆の船橋洋一氏が近著『宿命の子』(文藝春秋)で描いています
▼その後安倍氏は同能力保有を決断しました。首相辞任直前の20年9月に保有を促す談話を発表。これが岸田政権の安保3文書につながりました
▼敵基地攻撃を担うミサイルにJSMがあります。搭載するのは米主導で開発されたF35戦闘機。これが米国で激論になっています
▼同戦闘機計画は2兆ドル(約315兆円)以上かかるとされ、トランプ氏が政権の看板として重用する実業家イーロン・マスク氏が「史上最悪のF35計画を終わらせてくれ」とX(旧ツイッター)で酷評。これに民主党進歩派のサンダース上院議員が「マスク氏は正しい。国防予算は無駄とごまかしだらけだ」とエールを送ったのです
▼それでもF35とJSMの調達を進める石破政権。米国での議論には目もくれず要求されたことを忠実に実行する。「日米同盟」と言われると思考停止に陥る政治の姿がここにも。

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