(社説)中国の経済 中長期視点で改革を 2025年1月20日 5時00分
- 羅夢 諸星
- 1月20日
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停滞する国内経済。「対中強硬」の米国の新政権発足が追い打ちをかける。中国は内憂外患に直面している。足元の課題に取り組みつつ、中長期的な改革も進めねばならない。習近平(シーチンピン)政権には試練の1年となりそうだ。
中国の昨年の経済成長率は5・0%だった。数字上は政府目標を達成したが、実態はさえない。不動産不況が長引き、国内需要が低迷している。消費者物価は0・2%の上昇にとどまり、企業物価はマイナス2%台だ。デフレ圧力が続く。
そんな中でも成長を支えたのが輸出の伸びだった。しかし、米国のトランプ新大統領は就任後に中国製品に高関税をかけると公言している。
駆け込みも手伝い、昨年の対米輸出は前年より4・9%伸びたというが、その反動を含め対米輸出はこれから確実に減る。経済成長率に1ポイント程度のマイナスの影響があるとの試算もある。
欧州との間でも中国製電気自動車の輸出が貿易摩擦を生んでいるように、工業製品の輸出攻勢は他国の反発を招きがちだ。外需頼みの成長にはどうしても限界がある。
そのためか、経済政策の方針を議論するために昨年12月に開かれた中央経済工作会議は、国内需要の喚起を強く意識したものとなった。
消費については、自動車や家電の買い替えに補助金を出す現在の促進策を、さらに拡大する方針だ。
ただ、それは一定の効果をもたらすだろうが、将来の需要の先食いにすぎず、長続きはしまい。中国の大都市では市民の節約志向が急速に強まっており、消費を促すのは決して容易ではない。
一方、中央経済工作会議が示した政策メニューに、基礎年金や医療への財政補助の引き上げが明記されたことは注目される。不安定な雇用環境にある労働者への配慮や貧困対策を意識した項目も盛り込まれた。低所得層を支える仕組みは、持続的な成長をめざす上でも必要だろう。
やや心配なのが財政だ。これまで健全財政志向だった中国政府がこの局面で積極財政に乗り出しているのは理解できる。だが、深刻な地方債務への対応などにも着手したことで、余力がなくなりつつあるともみられている。
米国に次ぐ大国である中国は、世界全体の経済成長への貢献度という点では米国をしのぐ。その動向は隣国の日本のみならず各国の経済を左右する。前途は多難だが、それだけに習政権の政策運営の責任は重いと言わなければならない。
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