(社説)中国軍との緊張 力の誇示よりも対話を 社説 2024年9月30日 5時00分
- 羅夢 諸星
- 2024年10月1日
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いくら「国際ルールにのっとっている」と自らのふるまいを正当化したところで、威圧の応酬を止めねば、いつかは不測の衝突に発展しかねない。高まる緊張を冷ます対話が尽くされるべきだ。
中国軍が25日、訓練用の模擬弾頭を搭載した大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射し、ハワイ南方の公海上に落下させた。中国国防省は「国際法と国際慣例に沿っている」と説明。関係国に事前通告もした。しかし、見過ごすわけにはいかない。
中国は1980年に初のICBM発射実験を南太平洋に向けて行い、米ソに続く第3のICBM保有国となって世界に衝撃を与えた。その後は内陸部で発射実験をしていたが、今回44年ぶりに太平洋に発射した意図は何か。
中国を念頭に置いた米英豪の安全保障の枠組み「AUKUS(オーカス)」への対抗だった可能性がある。中国軍は今回、台湾周辺に戦闘機を送り込む動きも見せた。米国を牽制(けんせい)しつつ、対台湾作戦を展開する想定の演習だったとも考えられる。
米国とロシアの間には、冷戦期から引き継ぐ形で核弾頭やミサイルなど運搬手段を管理する取り組みがあった。ウクライナ危機による対立で米ロの協働は行き詰まっているが、米中間には核軍備管理の枠組み自体がない。
アジア太平洋地域で対中不信が広がる起点には、増強ペースが速いうえに不透明な中国の軍拡がある。核・ミサイル技術の誇示ではなく、責任ある大国としてリスク低減への取り組みを先導する役割を中国は果たすべきだ。
欧米諸国は台湾海峡を自由に通行できる国際水域と位置づけており、日本もこの見解に沿った。だが各国艦艇の頻繁な往来が中国軍を刺激し、不測の衝突が起きるおそれは十分にある。
軍と軍の相互牽制を通じて秩序作りを模索している、と肯定的に捉える見方はあろう。中国に対する意思表示も必要だ。しかし、武力の見せ合いは、やはり危険だ。重きを置くべきは外交・国防レベルの対話強化である。

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