<産経抄>「平和」の願いはなお遠く、授賞式に臨んだ被団協2024/12/12 05:00
- 羅夢 諸星
- 2024年12月15日
- 読了時間: 2分
ダイナマイトを生んだノーベルは、財をなすと同時に「死の商人」の汚名を負った。「私は平和的思想の促進のため、死後に多額の基金を残す」。世の平和に尽くす人々に賞を―と遺書には記したものの、効果には懐疑的だったようだ。
▼先の言葉に続け、こう述べたという。「戦争は状況がそれを不可能にするまで、これまで通り続くだろう」。その予言をなぞるように、世界は2度の大戦を含め度重なる戦火にさらされてきた。ヒトラーやスターリンら独裁者が、平和賞に推薦される皮肉な過去もあった。
▼人類は地上から戦火を絶てぬまま、今日を迎えている。2009年の平和賞も、いまとなっては苦い味わいしかない。「核兵器なき世界」を掲げて受賞したオバマ米大統領(当時)だが、自国と同盟国の安全を踏まえ、核廃絶には向かわなかった。
▼今年の平和賞に選ばれた日本原水爆被害者団体協議会(被団協)が、授賞式に臨んだ。会の結成から68年。被爆体験を語り、核兵器の廃絶を訴え続け、たどり着いた受賞である。代表者の演説と鳴りやまない拍手に、胸を打たれた人は多いだろう。
▼とはいえ、ロシアや北朝鮮などの専制国家による核使用の懸念は尽きない。この瞬間に、使用可能な数千発の核弾頭が空をにらむ現実もある。確かな核抑止力なくして、安全保障も平和も語れない。今年1月に発表された人類の「終末時計」は前年と同じ残り90秒だった。
▼1986年に平和賞を受けたユダヤ人作家、エリ・ヴィーゼルの言葉がある。「平和は神から人間への賜り物ではなく、人間同士の贈り物だ」。

。思いつく限りの「贈り物」を数え上げ、それでもなお、ノーベルの予言を覆す明日は遠い。
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